
高齢者が亡くなるまで住める賃貸契約とは?終身建物賃貸借と2025年制度改正を解説
高齢者・シニアの方がお部屋を探す際、
「70代になっても長く住み続けられる賃貸はある?」
「賃貸契約の更新が心配」
「自分が亡くなったら、部屋の契約はどうなる?」
「子どもや親族に負担をかけたくない」
「終身建物賃貸借という制度を聞いたけど、普通の賃貸と何が違う?」
といった疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
結論からいうと、60歳以上の方などを対象に、入居者が亡くなるまで契約が続く「終身建物賃貸借」という制度があります。
一般的な普通借家契約とは異なり、原則として入居者の死亡によって契約が終了し、賃借権が相続されない仕組みです。
さらに、2025年10月1日からは制度の認可手続きが簡素化され、住宅を提供する事業者が利用しやすい仕組みに見直されました。
ただし、60歳以上ならどの賃貸住宅でも終身契約ができるわけではありません。
今回は、国土交通省の公表資料をもとに、終身建物賃貸借の仕組み、普通借家との違い、同居家族の取り扱い、契約前の注意点を解説します。
■終身建物賃貸借とは?60歳以上が利用できる特別な賃貸契約
終身建物賃貸借は、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づく賃貸借制度です。
都道府県知事等の認可を受けた事業者が、一定の条件を満たす高齢者との間で契約を結びます。
一般的な賃貸借契約との大きな違いは、契約の終了時期です。
通常の普通借家契約では、借主が亡くなった場合でも、賃借権は原則として相続の対象になります。
一方、終身建物賃貸借では、入居者が生きている間は契約が存続し、死亡によって終了する仕組みです。
つまり、高齢者本人の居住の安定と、死亡後の賃貸借契約の整理を両立させるために設けられた制度といえます。
ただし、契約期間が「終身」であることは、家賃を支払わなくても住めることや、どのような事情があっても契約を終了できないことを意味しません。
入居者の債務不履行や建物の状況などによっては、法律上の条件に基づいて契約終了が問題になる場合があります。
■普通借家契約と終身建物賃貸借は何が違う?
一般的な賃貸住宅では、普通借家契約が利用されることがあります。
普通借家契約では、契約期間が満了しても、法律上の更新制度などによって居住が継続する場合があります。
また、借主が亡くなった場合、契約上の賃借権は原則として相続の対象になります。
これに対して終身建物賃貸借は、入居者本人の死亡によって契約が終了することが特徴です。
主な違いを整理すると、次のようになります。
普通借家契約
・年齢による全国共通の入居資格はない
・契約期間や更新について借地借家法の規定がある
・借主の死亡により賃借権が当然に消滅するわけではない
・貸主からの更新拒絶や解約には法律上の制限がある
終身建物賃貸借
・60歳以上の方などが対象
・入居者の死亡まで存続する一代限りの契約
・死亡時に賃借権が相続されない
・事業者の認可や住宅の基準などが定められている
・同居配偶者等については継続居住のための仕組みがある
ここで注意したいのは、普通借家契約だから高齢者が長く住めない、という意味ではないことです。
普通借家契約でも、契約内容や法律に基づいて長期間住み続けられる場合があります。
一方、終身建物賃貸借は、制度の対象となる住宅や契約条件が限定されています。
どちらが適しているかは、本人の生活状況や希望する住まいによって異なります。
■終身建物賃貸借は何歳から利用できる?
国土交通省によると、終身建物賃貸借の対象となる入居者は、原則として60歳以上の高齢者です。
また、同居者についても一定の条件があります。
具体的には、
・60歳以上の単身者
・配偶者と同居する60歳以上の方
・60歳以上の親族と同居する方
などが対象となる仕組みです。
配偶者については、60歳未満であっても同居できる取り扱いがあります。
例えば、70歳の夫と58歳の妻が一緒に住む場合でも、年齢要件の面では制度の対象となり得ます。
ただし、年齢要件を満たしていても、必ず入居できるわけではありません。
実際には、
・対象住宅があるか
・家賃を支払えるか
・保証会社の利用条件
・本人確認や必要書類
・同居者の条件
なども確認する必要があります。
高齢者の賃貸審査全般については、スマイファミリーの高齢者向け総合ガイドでも解説しています。
高齢者・シニアでも賃貸は借りられる?65歳・70代・80代の審査・年金・保証人を解説|東京・埼玉・関東
■2025年10月の制度改正で何が変わった?
終身建物賃貸借は以前から存在する制度ですが、2025年10月1日から認可手続きが簡素化されました。
以前は、実際に対象住宅の改修などを行ったうえで、住宅ごとに都道府県知事等の認可を受ける必要がありました。
これに対して改正後は、事前に事業者として認可を受け、実際に終身建物賃貸借を行うまでに対象住宅の必要な改修と届出を行う仕組みになりました。
流れとしては、
① 事業者として認可を受ける
必要な申請書類を提出し、終身建物賃貸借を行う事業者として認可を受けます。
② 対象住宅を整備する
対象となる住宅について、必要な設備や住宅基準を確認し、改修が必要な場合は対応します。
③ 対象住宅を届け出る
実際に終身建物賃貸借を行う住宅について、所定の届出をします。
この見直しは、主に住宅を提供する事業者側の手続きを簡素化するものです。
そのため、2025年10月の改正によって、全国のすべての賃貸住宅が終身建物賃貸借に対応したわけではありません。
また、希望する地域に対象住宅が何件あるかは別の問題です。
■入居者が亡くなった場合、同居している配偶者はどうなる?
終身建物賃貸借について、特に確認したいのが同居者の取り扱いです。
「夫の名義で終身建物賃貸借を結んでいる場合、夫が亡くなったら妻はすぐに退去しなければならない?」
と不安に思う方もいるでしょう。
終身建物賃貸借では、入居者本人が亡くなると、その方との契約は終了します。
ただし、一定の同居者には、引き続き居住するための仕組みが設けられています。
国土交通省の制度説明では、同居者は入居者の死亡を知った日から1か月以内に申し出ることによって、継続居住が可能とされています。
つまり、入居者が亡くなったからといって、対象となる同居者が必ずその場で住まいを失う仕組みではありません。
ただし、継続居住に関する手続きや対象となる同居者の条件は確認が必要です。
夫婦で入居する場合は、契約前に、
・誰が賃借人になるか
・配偶者が亡くなった場合の手続き
・残された方が居住を続ける方法
・必要な申出の期限
を確認しておくと安心です。
■一人暮らしの高齢者にとってどんな意味がある?
高齢者が一人で賃貸住宅を借りる場合、貸主や管理会社が心配することの一つに、入居者が亡くなった後の契約手続きがあります。
普通借家契約では、借主が亡くなった場合、賃借権が相続されるため、相続人との連絡や契約終了に関する手続きが必要になることがあります。
一方、終身建物賃貸借では、契約上の賃借権が入居者の死亡によって終了します。
貸主側にとっては、賃貸借契約を終了させるために相続人を探す負担を軽減できるという特徴があります。
これは、高齢者向け住宅の提供を考える貸主にとっても意味のある仕組みです。
ただし、ここには重要な注意点があります。
賃貸借契約が終了することと、室内の家具や家財を自由に処分できることは別です。
部屋に残された家具、家電、衣類などには所有権や相続の問題があるため、貸主が自由に廃棄できるとは限りません。
国土交通省と法務省は、残置物の処理に関するモデル契約条項も公表しています。
終身建物賃貸借を利用する際も、死亡後の残置物処理について別途確認しておくことが大切です。
■終身建物賃貸借なら更新料や家賃の値上げはない?
ここも誤解しやすい点です。
終身建物賃貸借は、入居者の死亡まで契約が続く仕組みですが、家賃が一生変わらない制度ではありません。
また、一般的な普通借家契約のように、期間満了に伴う更新を前提とした仕組みではありませんが、契約時の費用や月額費用がすべて不要になるわけではありません。
例えば、
・家賃
・管理費、共益費
・保証会社の利用料
・火災保険料
・見守りサービスなどの費用
は、物件や契約内容によって確認が必要です。
さらに、家賃改定に関する契約条件や法律上の取り扱いも確認しなければなりません。
「終身」という言葉だけで、生涯同じ費用で住み続けられると判断しないことが重要です。
■終身建物賃貸借とサービス付き高齢者向け住宅は同じ?
終身建物賃貸借と、サービス付き高齢者向け住宅は、同じ意味ではありません。
終身建物賃貸借は、主に高齢者向けの賃貸借契約の仕組みです。
一方、サービス付き高齢者向け住宅は、住宅の設備や安否確認・生活相談サービスなど、一定の基準を満たした高齢者向け住宅です。
また、2025年10月からは、改正住宅セーフティネット法に基づく「居住サポート住宅」の認定制度も始まっています。
居住サポート住宅は、住宅確保に配慮が必要な方に対し、
・日常の安否確認
・訪問等による見守り
・生活や心身の状態が不安定になった場合の福祉サービスへのつなぎ
などを提供する住宅です。
これらは制度の目的や仕組みが異なります。
終身建物賃貸借だから介護サービスや見守りが必ず付いている、というわけではありません。
高齢者の住まいを選ぶ際は、契約の形と、利用できる生活支援サービスを分けて確認しましょう。
■終身建物賃貸借はどこで探せる?
終身建物賃貸借は、一般の賃貸物件すべてで利用できる契約ではありません。
制度に基づく認可を受けた事業者と、対象となる住宅で利用する仕組みです。
そのため、物件検索サイトで「高齢者相談可」と表示されていても、終身建物賃貸借に対応しているとは限りません。
また、終身建物賃貸借に対応する住宅が、すべての地域で十分に供給されているわけでもありません。
物件を探す際は、
・希望する地域に対象住宅があるか
・事業者が制度上の認可を受けているか
・対象となる住宅の条件を満たしているか
・入居できる年齢や同居者の条件
・家賃と初期費用
・保証会社の利用条件
・見守りなどの支援の有無
を確認する必要があります。
制度に関する認可や対象住宅については、都道府県や政令指定都市・中核市などの担当窓口へ確認する方法もあります。
希望する地域に対象住宅が見つからない場合は、一般の賃貸住宅も含めて住まいを検討しましょう。
■契約前に確認したい5つのポイント
終身建物賃貸借を検討する際は、制度名だけでなく、実際の契約条件を確認することが大切です。
① 本当に終身建物賃貸借の対象住宅か
高齢者向け住宅という名称だけで判断せず、契約の種類と事業者の認可を確認します。
② 家賃と毎月の支払総額
家賃に加え、管理費、保証料、その他の月額費用も確認します。
③ 同居家族の取り扱い
夫婦などで入居する場合、賃借人が亡くなった後の継続居住の条件を確認します。
④ 中途解約の条件
老人ホームへの入所や親族との同居など、将来の生活環境の変化によって解約が必要になる場合があります。
終身建物賃貸借では、借主側の解約理由によって、解約申入れから契約終了までの取り扱いが異なります。
⑤ 死亡後の家財や残置物の取り扱い
契約が終了した後、室内の家具や家財を誰がどのように整理するのかを確認します。
親族や支援者と相談し、必要な手続きについて準備しておくことも大切です。
■よくある質問
Q. 終身建物賃貸借は60歳以上なら誰でも利用できますか?
60歳以上などの入居要件がありますが、対象住宅や事業者の認可、契約条件も確認する必要があります。年齢だけで必ず利用できるわけではありません。
Q. 普通の賃貸契約では高齢者は長く住めませんか?
普通借家契約でも長く住み続けられる場合があります。終身建物賃貸借は、死亡時の契約終了などについて特別な仕組みを持つ制度です。
Q. 終身建物賃貸借は老人ホームと同じですか?
同じではありません。終身建物賃貸借は賃貸借契約の仕組みであり、介護や食事、見守りサービスが必ず付くわけではありません。
Q. 夫婦で住んでいて契約者が亡くなったらどうなりますか?
一定の同居者には、死亡を知った日から1か月以内の申出によって継続居住できる仕組みがあります。契約内容と手続きを事前に確認しましょう。
Q. 終身建物賃貸借は家賃が一生変わらない契約ですか?
いいえ。家賃やその他の費用については、契約条件や法律上の取り扱いを確認する必要があります。
Q. 入居者が亡くなったら大家さんは家財を自由に処分できますか?
いいえ。賃貸借契約の終了と残置物の処理は別の問題です。家具や家財の扱いについては、別途適切な手続きが必要になります。
Q. 2025年10月の制度改正で、すべての高齢者向け賃貸が終身契約になりましたか?
いいえ。改正されたのは主に事業者の認可手続きです。一般の賃貸住宅が自動的に終身建物賃貸借へ切り替わるわけではありません。
■東京・埼玉など関東で高齢者・シニアのお部屋探しをお考えの方へ
高齢者の賃貸住宅を選ぶ際は、現在の年齢や家賃だけでなく、将来も無理なく暮らせる住まいかを考えることが大切です。
終身建物賃貸借は、60歳以上の方などを対象とした特別な賃貸借制度であり、死亡時の契約終了や同居者の継続居住について、普通借家契約とは異なる仕組みがあります。
ただし、すべての物件で利用できるわけではありません。
また、一般の賃貸住宅でも、年金収入や保証会社、緊急連絡先、見守りなどの条件を整理することで、入居を相談できる物件があります。
スマイファミリーでは、高齢者・シニアの方のお部屋探しについてもご相談いただけます。
「70代・80代でも相談できる物件を探したい」
「これから長く住める賃貸住宅を見つけたい」
「親の住まいを家族で相談したい」
「一般の賃貸と高齢者向け住宅の違いを知りたい」
このような場合も、現在の生活状況や希望条件を整理しながら、住まい探しをお手伝いします。
東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬など関東で、高齢者の賃貸住宅をお探しの方は、スマイファミリーへご相談ください。

