
高齢者の賃貸住宅に手すりは付けられる?介護保険の住宅改修20万円・貸主承諾・原状回復を解説
「賃貸マンションの浴室に手すりを付けたい」
「高齢の親が転びそうなので、廊下の段差をなくしたい」
「介護保険を使えば賃貸住宅でも工事できる?」
「大家さんに無断で手すりを設置しても大丈夫?」
「退去するときは手すりを撤去しなければならない?」
高齢になってから賃貸住宅で生活する場合、これまで問題なく利用していた階段や浴室、トイレなどが負担になることがあります。
例えば、浴槽をまたぐことが難しくなったり、玄関の段差で転びそうになったりするケースです。
そのようなときに検討できるのが、手すりの設置や段差解消などの住宅改修です。
結論からいうと、賃貸住宅でも、貸主の承諾を得るなど必要な条件を満たせば、手すりの設置や段差解消などの工事を行える場合があります。さらに、要支援・要介護認定を受けている方は、対象となる住宅改修について介護保険を利用できる可能性があります。
介護保険の住宅改修費には、原則として20万円の支給限度基準額が設けられており、所得に応じて対象費用の7〜9割が保険給付されます。
ただし、20万円がそのまま現金でもらえる制度ではありません。
また、賃貸住宅では、介護保険の対象になる工事でも貸主の承諾が必要になるため、事前に確認することが重要です。
今回は、埼玉・東京・千葉・神奈川など関東で暮らす高齢者の方やそのご家族へ、賃貸住宅の手すり設置、介護保険の住宅改修、必要書類、費用負担、退去時の原状回復について解説します。
■高齢者が住む賃貸住宅に手すりを設置できる?
賃貸住宅であっても、貸主の承諾を得て手すりを設置できる場合があります。
ただし、壁や床へ穴を開ける工事は、借主の判断だけで自由に実施できるわけではありません。
例えば、次の場所への設置が考えられます。
玄関の上がり框
廊下
トイレ
浴室
洗面所
室内の段差がある場所
ただし、すべての場所に手すりを設置できるわけではありません。
建物の構造や壁の下地、設備の位置、防水性能などによって施工できないこともあります。
賃貸住宅で確認すべき3つの条件
確認事項 | 内容 |
|---|---|
① 貸主の承諾 | 工事を実施してよいか |
② 建物の安全性 | 壁や床へ安全に施工できるか |
③ 介護保険の条件 | 対象者・対象工事・事前申請に該当するか |
重要なのは、貸主の承諾と介護保険の給付決定は別だということです。
貸主が工事を認めても、必ず介護保険の給付対象になるとは限りません。
反対に、介護保険の対象となる工事でも、賃貸住宅の所有者による承諾などが必要になります。
■介護保険の住宅改修費とは?
介護保険の住宅改修費とは、要介護・要支援認定を受けている方が、自宅で生活を続けるために必要な小規模の住宅改修を行う場合に、対象費用の一部を給付する制度です。
厚生労働省では、手すりの取付け、段差の解消、滑りにくい床材への変更などを対象工事として定めています。
対象となる主な工事
工事の種類 | 具体例 |
|---|---|
手すりの取付け | 廊下・トイレ・浴室・玄関 |
段差の解消 | 敷居の段差解消・スロープ設置 |
床材の変更 | 滑りにくい床材への変更 |
扉の取替え | 開き戸から引き戸への変更 |
便器の取替え | 和式便器から洋式便器への変更 |
付帯工事 | 上記の対象工事に必要な関連工事 |
ただし、同じ種類の工事でも、目的や内容によって介護保険の対象外となる場合があります。
例えば、古くなった設備を新しくしたいだけの一般的なリフォームは、必ずしも給付対象になりません。
要介護認定を受けていない場合は?
住宅改修費の給付には、要支援・要介護認定など所定の要件があります。
認定を受けていない方が利用したい場合は、まず自治体の介護保険窓口や地域包括支援センターへ相談しましょう。
単に65歳以上であるという理由だけで、介護保険の住宅改修費を利用できるわけではありません。
■住宅改修費の20万円は全額支給される?
ここは誤解しやすい部分です。
介護保険の住宅改修費は、原則として20万円を支給限度基準額とし、対象工事費の7〜9割が保険給付される仕組みです。
つまり、20万円が無条件で支給されるわけではありません。
工事費20万円の場合の自己負担
介護保険の負担割合 | 保険給付額 | 自己負担額 |
|---|---|---|
1割負担 | 180,000円 | 20,000円 |
2割負担 | 160,000円 | 40,000円 |
3割負担 | 140,000円 | 60,000円 |
※20万円の工事すべてが給付対象と認められ、支給限度基準額に未使用枠がある場合の単純計算です。
例えば、浴室とトイレへ手すりを設置するために、対象工事費が10万円かかった場合です。
1割負担の方なら、保険給付の対象となる部分について自己負担は1万円という計算になります。
ただし、対象外の工事費や20万円を超える部分がある場合は、その分の負担が別途必要です。
工事費が30万円だったら?
例えば、支給限度基準額が20万円残っている1割負担の方が、30万円の工事を行い、その全額が制度上の対象工事に該当するとします。
項目 | 金額 |
|---|---|
工事費総額 | 300,000円 |
給付計算の上限となる費用 | 200,000円 |
介護保険からの給付 | 180,000円 |
最終的な自己負担 | 120,000円 |
この例では、20万円までの1割負担に加え、上限を超える10万円を本人が負担する計算です。
工事を依頼する前に、どの部分が介護保険の対象になるか確認しましょう。
■賃貸住宅では大家さんの承諾書が必要?
賃貸住宅は、入居者本人ではなく貸主などが所有している住宅です。
そのため、住宅に手すりを固定したり、床や扉を変更したりする場合は、所有者の承諾が必要になります。
さいたま市でも、住宅の所有者が本人以外の場合、住宅改修の申請にあたり所有者の承諾書を求めています。
貸主に確認する内容
項目 | 確認したいこと |
|---|---|
工事の場所 | 浴室・玄関・廊下など |
工事の方法 | 壁や床への固定方法 |
工事業者 | 誰が施工するか |
費用負担 | 誰が工事代金を支払うか |
工事日程 | いつ施工するか |
原状回復 | 退去時に撤去するか |
承諾書 | 介護保険申請用の書類 |
管理会社へ伝える例
「現在、介護保険による住宅改修を検討しています。浴室とトイレへの手すり設置が必要なため、施工内容を確認していただき、所有者の承諾をいただけるかご相談したいです。」
このように、工事の必要性と具体的な内容を伝えると、貸主側も判断しやすくなります。
ただし、管理会社へ相談しただけで、工事の承諾が成立したとは限りません。
必要な承諾を確認してから工事を進めましょう。
■介護保険の申請は工事前?工事後?
原則として、工事を始める前に申請する必要があります。
さいたま市では、住宅改修の必要性や工事内容を確認するため、事前申請を行い、市の確認を受けてから工事を進める仕組みになっています。
事前申請をしないまま工事した場合、原則として介護保険の給付対象にならないため注意が必要です。
住宅改修の基本的な流れ
① ケアマネジャー等へ相談
生活上の困りごとと、必要な改修内容を整理します。
② 貸主・管理会社へ工事相談
改修場所や施工方法、原状回復の条件を確認します。
③ 見積書・図面・写真などを準備
必要書類や所有者承諾書をそろえます。
④ 自治体へ事前申請
介護保険の対象となる工事か確認を受けます。
⑤ 市の確認後に工事を実施
承認・確認された内容に沿って施工します。
⑥ 工事後の書類提出・給付
領収書や完成写真等を提出し、所定の方法で給付を受けます。
申請書類や手続きは自治体によって異なる場合があります。
特に、賃貸住宅では所有者の承諾に時間がかかる可能性があるため、早めに相談しておきましょう。
■さいたま市で住宅改修を申請する場合の必要書類
さいたま市では、住宅改修を行う際に、事前申請や工事後の手続きが設けられています。
事前申請で準備する主な資料
介護保険住宅改修費支給申請書
住宅改修が必要な理由書
工事費の見積書
改修場所を示す平面図など
改修前の状態が分かる写真
所有者が本人以外の場合の承諾書
申請方法や必要書類は、対象者の状況、支払い方法などによって異なります。
詳しくは、さいたま市の公式案内をご確認ください。
なお、さいたま市以外に住んでいる方は、ご自身の住民登録がある自治体の介護保険担当窓口へ確認してください。
■介護保険の住宅改修費は先に全額支払う?
原則的な支払方法の一つが「償還払い」です。
これは、工事費をいったん利用者が支払い、その後に介護保険から対象額の給付を受ける方法です。
例えば、工事費が15万円で、対象費用の1割が自己負担となる方の場合です。
項目 | 金額 |
|---|---|
工事会社へ支払う金額 | 150,000円 |
後日支給される金額 | 135,000円 |
最終的な自己負担 | 15,000円 |
※15万円全額が給付対象で、支給限度基準額が十分に残っている場合。
ただし、自治体によっては「受領委任払い」など、利用者が自己負担分を支払い、残りの保険給付分を事業者が受け取る方法も利用できます。
さいたま市の住宅改修手引きにも、受領委任払いに関する書類が案内されています。
どの支払方法を利用できるか、施工業者が対応しているかを工事前に確認しましょう。
■壁に穴を開けない手すりなら自由に設置できる?
賃貸住宅では、壁に穴を開けない置き型・据え置き型の手すりを検討する方法もあります。
ただし、工事を必要としない手すりであっても、安全に利用できるか確認することが重要です。
固定式と置き型の違い
項目 | 壁などに固定する手すり | 置き型・据え置き型 |
|---|---|---|
設置方法 | 壁・床などへ固定 | 製品の仕様による |
住宅への加工 | 必要になる場合がある | 不要な製品もある |
貸主承諾 | 工事内容に応じて必要 | 建物への影響や契約条件を確認 |
介護保険 | 住宅改修費の対象となる場合がある | 福祉用具貸与等の対象となる場合がある |
安全性 | 下地・施工方法が重要 | 転倒や移動を防げる設置が重要 |
介護保険では、住宅改修とは別に、福祉用具貸与という制度もあります。
厚生労働省は、手すりやスロープなどを福祉用具貸与の対象として案内しています。
ただし、製品を購入・設置すれば必ず介護保険が適用されるわけではありません。
本人の身体状況や製品の種類、介護保険の条件を確認しましょう。
■賃貸住宅を退去するとき、設置した手すりは撤去する?
退去時に手すりを撤去する必要があるかは、賃貸借契約や工事承諾時の取り決めなどによって異なります。
例えば、貸主が手すりの設置を認めていても、退去時には元の状態に戻す条件になっている場合があります。
一方、貸主が手すりを残すことを認める場合も考えられます。
工事前に決めておきたいこと
確認項目 | 内容 |
|---|---|
手すりの所有者 | 誰の設備として扱うか |
修理・交換 | 故障した際の負担 |
退去時 | 撤去が必要か |
壁の補修 | 穴などを補修するか |
費用 | 撤去費・補修費を誰が負担するか |
残置 | 貸主がそのまま残すことを認めるか |
介護保険を利用して設置した手すりだからといって、退去時の原状回復義務が自動的になくなるわけではありません。
また、工事費が保険給付の対象になったことと、退去時の費用が保険で支払われることも別です。
貸主・管理会社へ確認する際は、設置の承諾だけでなく、退去時の取り扱いも書面で整理しておきましょう。
■介護保険の住宅改修は何度でも20万円まで使える?
住宅改修費の支給限度基準額は、原則として20万円です。
一度に20万円すべてを使用しなかった場合は、残りの枠について別の対象工事で利用できる場合があります。
ただし、工事をするたびに20万円の新しい枠が自動的に設定されるわけではありません。
厚生労働省では、一定の要介護状態区分の変化や転居があった場合などに、支給限度基準額を再度設定する仕組みを定めています。
引っ越した場合はどうなる?
介護保険の住宅改修では、転居によって新たな支給限度基準額が設定される場合があります。
ただし、転居するたびに何でも自由に改修できるという意味ではありません。
新しい住居での必要性、対象工事、申請手続き、貸主承諾などを確認する必要があります。
■手すりの設置を断られた場合はどうする?
賃貸住宅の所有者から工事の承諾を得られない場合、無断で施工することは避けましょう。
まず、なぜ承諾が難しいのか確認します。
例えば、
壁の強度が不足している
浴室の防水性能に影響する
共用部分に関係する
退去時の補修が難しい
工事方法が不明確
などの理由が考えられます。
その場合、工事方法を変更できないか、据え置き型の福祉用具を利用できないか相談する方法があります。
工事が難しい場合の選択肢
方法 | 確認事項 |
|---|---|
施工方法の変更 | 建物へ与える影響を減らせるか |
福祉用具の貸与 | 身体状況・制度の対象か |
置き型手すり | 安全に設置できるか |
段差の少ない物件へ住み替え | 家賃・初期費用・審査 |
バリアフリー対応住宅 | 設備や入居条件 |
すでに生活に支障が出ている場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談しましょう。
また、建物そのものが今後の生活に合わない場合は、住み替えを検討することも考えられます。
高齢者・シニアの賃貸内見で確認したい設備や生活環境について詳しく見る →
■高齢者の賃貸住宅で改修前に確認したいチェックリスト
確認項目 | 内容 |
|---|---|
① 要介護認定 | 要支援・要介護認定の状況 |
② 改修の必要性 | 生活動作のどこに支障があるか |
③ 改修場所 | 玄関・浴室・トイレ・廊下等 |
④ 貸主承諾 | 工事を認めてもらえるか |
⑤ 工事内容 | どのような施工をするか |
⑥ 業者 | 施工会社・見積内容 |
⑦ 費用 | 総額と介護保険対象額 |
⑧ 自己負担 | 1〜3割負担や対象外費用 |
⑨ 支払方法 | 償還払い・受領委任払い等 |
⑩ 事前申請 | 自治体の確認を受けたか |
⑪ 工事後の資料 | 領収書・完成写真 |
⑫ 原状回復 | 退去時の撤去・補修条件 |
工事内容だけでなく、賃貸借契約上の条件と介護保険の申請手続きを分けて確認することが重要です。
■よくある質問(FAQ)
Q1.賃貸住宅でも介護保険で手すりを設置できますか?
要支援・要介護認定などの要件を満たし、対象工事として認められれば、介護保険を利用できる可能性があります。
ただし、賃貸住宅では貸主の承諾などが必要になります。
Q2.介護保険の住宅改修費20万円は全額もらえますか?
いいえ。
20万円は原則として給付額そのものではなく、支給対象費用の限度基準額です。対象費用の7〜9割が保険給付され、自己負担割合等に応じた負担が生じます。
Q3.大家さんに無断で手すりを付けてもいいですか?
壁や床に固定する工事などは、貸主の承諾が必要です。
介護保険の申請ができる場合でも、貸主の承諾を得ずに工事してよいという意味ではありません。
Q4.手すりを付けた後に介護保険を申請できますか?
原則として、工事前の申請が必要です。
やむを得ない事情による例外的な取り扱いもありますが、自己判断で先に施工せず、自治体へ確認しましょう。
Q5.退去時は手すりを撤去する必要がありますか?
契約内容や貸主との取り決めによって異なります。
工事の承諾を得る際に、撤去や原状回復の条件まで確認しておくことが重要です。
■まとめ|賃貸住宅の手すり設置は、貸主承諾と介護保険の事前申請が重要
高齢者の方が賃貸住宅で安心して生活を続けるために、手すりの設置や段差の解消を検討することがあります。
介護保険では、要支援・要介護認定などの条件を満たす方を対象に、一定の住宅改修費を給付する制度があります。
今回の重要なポイントは次の5つです。
賃貸住宅でも貸主の承諾を得て住宅改修できる場合がある
介護保険の支給限度基準額は原則20万円
所得に応じて対象費用の7〜9割が給付される
原則として工事前の申請が必要
退去時の原状回復についても事前に確認する
特に、手すりの設置や段差解消を急いでいる場合でも、介護保険の手続きと貸主承諾を確認せずに工事を始めないことが重要です。
現在の住まいで安全に生活するための改修が可能か、難しい場合は住み替えを検討するか、本人の生活状況に合わせて判断しましょう。
高齢者・シニアの方の賃貸審査、年金、保証会社、緊急連絡先、住み替えなどについては、スマイファミリーの総合ガイドでも解説しています。
■関東で高齢者・シニア向けの賃貸住宅をお探しの方へ
「高齢の親が安全に暮らせる部屋を探したい」
「手すりのある賃貸マンションに引っ越したい」
「階段の上り下りが難しくなってきた」
「介護保険を利用した住宅改修について相談したい」
「現在の住まいが生活に合わなくなってきた」
このような場合は、家賃や間取りだけでなく、生活動線や必要な設備を確認することが大切です。
スマイファミリーでは、埼玉・東京・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬など、関東で高齢者・シニアの方のお部屋探しについてご相談を承っています。
現在の生活状況、希望する家賃、通院先、必要な設備、保証会社の条件などを確認しながら、住まい探しをお手伝いします。
また、バリアフリー設備が必要な方についても、募集物件の設備状況や、貸主・管理会社へ確認すべき事項を整理できます。
なお、介護保険の給付認定や住宅改修の施工可否については、自治体・ケアマネジャー・専門の施工業者などへの確認が必要です。
高齢者・シニアの方のお部屋探しや、今後の生活に合った住まいへの住み替えを検討している方は、スマイファミリーへご相談ください。
家族のように寄り添い、暮らしをもっと豊かに。

