
賃貸オーナーは退去時の原状回復費をどこまで請求できる?通常損耗・経年劣化・特約を解説|東京・埼玉・関東
アパートやマンション、戸建てなどを賃貸しているオーナー様にとって、入居者の退去時に悩みやすいのが原状回復費用です。
「クロスが汚れているから全部張り替えて請求していい?」
「家具を置いていた床の跡は借主負担?」
「タバコの臭いが強い場合は?」
「ペットが壁や床を傷つけたら?」
「ハウスクリーニング代は必ず請求できる?」
「入居前より古くなっているのだから全部直してもらえる?」
と疑問を持つオーナー様も多いと思います。
結論からいうと、
退去時に室内を新品同様へ戻すための費用を、すべて入居者へ請求できるわけではありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の使用による損耗や経年変化と、借主の故意・過失などによる損耗を分けて考える基本的な考え方が示されています。国土交通省
大切なのは、
「傷んでいるから借主負担」ではなく、なぜ傷んだのか、いつからあったのか、契約ではどう定めているのかを整理すること
です。
スマイファミリーでは、東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬など関東で、賃貸管理、退去対応、原状回復、入居者募集、空室対策などオーナー様からのご相談を承っています。
埼玉で賃貸管理にお悩みのオーナー様へ|空室対策・入居者募集・修繕・退去まで解説
■そもそも「原状回復」とは?
原状回復という言葉から、
「入居したときと完全に同じ状態へ戻すこと」
と思われることがあります。
しかし、国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、通常の使用に伴う損耗について、借主に原状回復義務を負わせない考え方が示されています。国土交通省
例えば、入居者が何年も普通に生活していれば、
壁紙
床
建具
設備
などは徐々に古くなります。
こうした経年変化まで借主へ全面的に負担させるものではないというのが基本的な考え方です。
■オーナー負担になりやすい「通常損耗・経年変化」
通常の生活をしていて自然に発生する損耗や、時間の経過による劣化は、一般的に貸主側で考える部分になります。
例えば、
家具を通常設置していたことによる床への軽い跡
日光による壁紙や床の変色
設備の経年劣化
通常使用による細かな摩耗
などです。
もちろん、実際の負担区分は傷の程度、契約内容、使用状況などによって判断します。
重要なのは、
「傷がある=借主負担」と自動的に判断しないこと
です。
■借主負担になり得る損傷とは?
一方で、借主の故意・過失や通常の使用を超える使い方によって発生した損傷は、借主負担を検討することがあります。
例えば、
物をぶつけて壁に大きな穴を開けた
不注意で床を大きく傷つけた
掃除や必要な手入れを怠って汚損を拡大させた
設備を誤った方法で使用して破損した
などです。
ただし、
「傷を付けたから部屋全部のリフォーム代を請求」
という考え方ではありません。
損傷した範囲や経過年数なども含めて整理する必要があります。
■壁紙に傷があったら全面張替えを請求できる?
ここは退去時によく問題になる部分です。
例えば、
壁の一部分に入居者の不注意による傷がある
場合でも、
その部屋すべての壁紙交換費用を当然に借主負担にできるとは限りません。
国土交通省のガイドラインでは、借主負担となる場合でも、損傷部分や補修範囲、経過年数などを考慮する考え方が示されています。国土交通省
そのため、
どこが損傷しているのか
何が原因なのか
どこまで補修する必要があるのか
を写真などで記録しておくことが重要です。
■入居者がタバコを吸っていた場合
室内喫煙によって、
壁紙の黄ばみ
強い臭い
ヤニ汚れ
などが発生することがあります。
この場合は、通常使用による自然な変色とは異なる可能性があります。
ただし、
喫煙していた
↓
室内すべてを新品へ交換
↓
費用は全額入居者
と単純に判断するのではなく、
実際の汚損状況、臭い、契約内容、補修範囲などを確認します。
入居時に、
喫煙可
禁煙
などの条件を明確にしておくことも重要です。
■ペットによる傷・臭いの場合
ペット可物件でも、
ペット可=傷や臭いの原状回復費用まで不要
という意味ではありません。
例えば、
猫の爪による壁の大きな傷
犬による建具の損傷
尿などによる床の汚れ
強い臭い
などがあれば、退去時に費用負担が問題になる可能性があります。
ペット可物件では契約前に、
飼育できる種類
頭数
追加敷金
退去時の取り扱い
などを明確にしておくとトラブルを減らしやすくなります。
■設備が壊れていたら借主負担?
これも原因によります。
例えば、
長年使用した給湯器が経年劣化で故障した
場合と、
入居者が設備を破損した
場合は同じではありません。
国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、原則として貸主が使用に必要な修繕を行い、借主の責任で修繕が必要になった場合については別に考える仕組みが示されています。国土交通省
設備故障については、
使用年数
故障原因
修理業者の診断
契約上「設備」なのか「残置物」なのか
などを確認しましょう。
■入居時の写真が非常に重要
退去時に、
「この傷は入居前からあった」
「いや、入居者が付けた」
と争いになることがあります。
国土交通省も、原状回復トラブルを防ぐため、入居時と退去時に物件状況を確認し、チェックリストや写真などで記録しておくことが有効と案内しています。国土交通省
オーナー・管理会社側でも、
入居前の各部屋
壁
床
天井
建具
水回り
設備
などを写真で残しておきましょう。
傷や汚れがある場合は、アップ写真だけでなく、
どの場所なのか分かる全景写真
も残すと比較しやすくなります。
■退去時にも写真を残す
退去立会い時には、
入居時写真
↓
退去時写真
を比較できる状態にします。
例えば、
入居時にはなかった壁穴
床の深い傷
建具破損
などがあれば、いつ発生したものなのか整理しやすくなります。
口頭だけで、
「これは入居者が壊しました」
と説明するより、記録がある方が双方にとって確認しやすくなります。
■退去立会いでその場ですべて決めない
退去立会いでは、
壁
床
設備
鍵
残置物
などを確認します。
ただし、
その場で正確な原状回復費用をすべて確定できるとは限りません。
業者による確認や見積もりが必要になる場合があります。
そのため、
退去立会い
↓
補修箇所確認
↓
見積もり
↓
負担区分整理
↓
敷金精算
という流れになるケースがあります。
■借主に「全部払ってください」と言わない
退去時に室内がかなり傷んでいると、
「全部入居者の責任だから全部請求する」
と言いたくなる場合があります。
しかし、
経年劣化
通常損耗
借主による損傷
が一つの部屋に混在していることがあります。
例えば壁紙が、
もともと古かった
+
入居者が一部傷を付けた
という場合です。
この場合、
どこまでが通常損耗で、どこからが借主の責任なのか
を整理します。
■ハウスクリーニング代は必ず借主負担?
必ずとは言えません。
契約時に、
退去時クリーニング費用
について特約を設けている賃貸物件があります。
ただし、
「契約書に一言書いておけば、どのような内容でも必ず有効」
とは単純に言えません。
国土交通省のガイドラインでも、原状回復に関する特約について、契約条件を明確にすることの重要性が示されています。国土交通省
特約を設ける場合は、
どの費用を
どの程度
どのような条件で
借主が負担するのかを分かりやすくしておくことが重要です。
■敷金から自由に差し引いていい?
敷金を預かっている場合でも、
退去したから自由に全額を原状回復へ充てられる
というわけではありません。
借主が負担すべき未払い債務や原状回復費などを整理し、その内容を明確にして精算します。
国土交通省のガイドラインには、原状回復の精算明細に関する様式例も掲載されています。国土交通省
何にいくら使用したのかが分かる形にしておくことが重要です。
■見積書は項目を細かくする
例えば、
原状回復一式 300,000円
だけでは、借主から、
「何に30万円かかるのですか?」
と言われても説明しにくくなります。
できれば、
クロス補修
床補修
建具補修
クリーニング
残置物撤去
など、項目を分けます。
さらに、
貸主負担
借主負担
を整理すると、精算内容を説明しやすくなります。
■安い原状回復工事が正解とは限らない
オーナー様にとって原状回復費はコストです。
しかし、
「とにかく一番安い工事」
だけを選ぶと、次の入居募集に影響する場合があります。
例えば、
壁紙は補修跡が目立つ
床の傷が残る
水回りが汚れている
設備が古い
という状態で募集すると、内見時の印象が悪くなる可能性があります。
退去時の原状回復は、
前の入居者との精算
だけではなく、
次の入居者を決めるための募集準備
でもあります。
埼玉で賃貸管理会社を探すオーナー様へ|管理業務の内容と選び方を解説
■オーナー負担でも交換した方がいい場合
借主へ請求できないからといって、
「直さない」
という判断が必ずしも正しいとは限りません。
例えば、
古いエアコン
黄ばんだ壁紙
傷んだ床
古い水栓
などは、貸主負担で交換・修繕してでも、次の募集力を高めた方がよい場合があります。
ここでは、
原状回復
と、
空室対策としてのグレードアップ
を分けて考えます。
借主へ請求する費用と、オーナー様が次回募集のために行う追加工事を混ぜないことが重要です。
■退去予定が出た段階から次の募集を考える
原状回復工事が完了してから初めて、
「次はいくらで募集しよう?」
と考えると、空室期間が長くなる可能性があります。
退去予定が分かったら、
現在の家賃
周辺相場
次回募集条件
必要な修繕
追加したい設備
募集開始日
を整理しておきます。
スマイファミリーの賃貸管理親ページでも、退去予定が分かった段階で原状回復予定や次回募集を整理することが空室期間対策につながると案内しています。スマイファミリー
■借主側が何を確認しているか知っておく
借主側の記事では、
退去時に契約書を確認する
立会い内容を確認する
写真を残す
原状回復費の内容を確認する
ことを案内しています。スマイファミリー
つまりオーナー・管理会社側も、
「説明できる精算」
を作ることが大切です。
埼玉の賃貸を退去するときは?解約連絡の期限・立会い・費用を解説
■自主管理の場合に特に注意したいこと
自主管理のオーナー様の場合、
退去受付
立会い
見積もり
敷金精算
工事手配
次回募集
まで自分で行う必要があります。
特に原状回復は、
「今までこうしていたから」
だけで判断すると、借主との認識に差が出る可能性があります。
国土交通省のガイドラインや現在の契約内容を確認しながら進めましょう。
管理会社へ委託する場合も、
誰が退去立会いをするのか
原状回復業者を誰が選ぶのか
オーナー承認はいくら以上で必要か
借主との精算を誰が説明するのか
まで確認すると安心です。
■原状回復でオーナー様が確認したい順番
退去時は、次の流れで整理すると分かりやすくなります。
1.賃貸借契約書・特約を確認する
2.入居時の写真・チェックリストを確認する
3.退去後の室内状態を記録する
4.通常損耗・経年劣化と損傷を分ける
5.故意・過失などが疑われる箇所の原因を確認する
6.補修範囲を決める
7.工事見積もりを取得する
8.貸主負担・借主負担を整理する
9.敷金等を精算する
10.次回募集のための追加修繕・設備交換を検討する
ポイントは、
「工事費はいくらか」から始めないこと
です。
まず負担区分を整理します。
■よくある質問
Q. 入居者が退去したら室内を新品に戻す費用を請求できますか?
通常損耗や経年変化まで、すべて借主負担にできるとは限りません。損傷原因や契約内容を確認して整理します。
Q. 壁紙に傷があれば部屋全部の張替え代を請求できますか?
損傷箇所、補修範囲、経過年数などを確認する必要があります。一部分の傷だから当然に全面張替え全額が借主負担になるとは限りません。
Q. 家具の跡は借主負担ですか?
通常使用によるものか、通常使用を超える損傷なのかによって考え方が変わります。入退去時の状態を比較してください。
Q. ペット可物件なら傷もオーナー負担ですか?
ペット飼育を認めていることと、ペットによって生じた損傷の費用負担は別です。契約内容や傷・汚れの状況を確認します。
Q. ハウスクリーニング特約があれば必ず請求できますか?
特約の内容や契約時の説明などを含めて確認が必要です。負担内容を明確にしておくことが重要です。
Q. 敷金から原状回復費を引いて残りだけ返せばいいですか?
借主負担となる費用を整理し、精算内容を分かるようにすることが重要です。
Q. 入居時の写真がありません。
退去時の状態だけでは、いつ発生した傷なのか判断が難しくなる場合があります。今後の契約では入居時写真・チェックリストを残す運用をおすすめします。
Q. 管理会社へ任せれば原状回復は全部やってもらえますか?
管理委託の範囲によります。退去立会い、精算、工事発注まで含まれるか管理契約を確認しましょう。
■関東で賃貸管理・原状回復にお悩みのオーナー様へ
退去時の原状回復では、
「いくら借主へ請求できるか」だけを考えることはおすすめしません。
まず、
入居時はどの状態だったのか。
何が通常損耗なのか。
どこが借主の故意・過失による損傷なのか。
契約書や特約はどうなっているのか。
どこまで補修する必要があるのか。
を整理します。
そのうえで、
原状回復
敷金精算
次回募集のための修繕
設備交換
を分けて考えることが重要です。
スマイファミリーでは、東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬で、アパート・マンション・戸建てなどの賃貸管理、退去対応、原状回復、入居者募集、空室対策についてご相談を承っています。
「原状回復費の負担区分が分からない」「退去から次の募集まで任せたい」「現在の管理会社の対応を見直したい」というオーナー様も、スマイファミリーへお気軽にご相談ください。