
身寄りのない高齢者でも賃貸を借りられる?残置物処理・死後事務委任契約と保証人の違いを解説
「身寄りがない高齢者でも賃貸マンションを借りられる?」
「亡くなった後、部屋に残った家具や荷物は誰が片付ける?」
「家族がいないと賃貸契約を断られる?」
「死後事務委任契約をしていれば保証人はいらない?」
「高齢者の入居について、大家さんに安心してもらう方法はある?」
65歳・70代・80代など、高齢になってから住み替えを検討する方の中には、身近に頼れる親族がいない方や、一人暮らしを続けたい方もいます。
また、親族がいても遠方に住んでいるため、緊急時や万一の際に対応できるか不安を感じる場合があります。
結論からいうと、身寄りがないという理由だけで、すべての賃貸住宅を借りられなくなるわけではありません。
ただし、貸主や管理会社が、入居者の死亡後に残された家財や賃貸借契約の処理について不安を感じる場合があります。
こうした問題に対応するため、国土交通省と法務省は「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しています。
この仕組みを活用することで、入居者本人が亡くなった場合の契約解除や家財の取り扱いについて、あらかじめ準備できる可能性があります。
今回は、埼玉・東京・千葉・神奈川など関東で賃貸物件を探している高齢者の方とそのご家族へ、残置物処理、死後事務委任契約、保証人との違い、費用、入居前に確認することを解説します。
■身寄りのない高齢者は賃貸を借りられない?
身寄りがないという理由だけで、賃貸契約が法律上一律に禁止されているわけではありません。
しかし、貸主や管理会社が入居審査で確認したいことは、家賃の支払い能力だけとは限りません。
例えば、次のような項目です。
毎月の家賃を支払えるか
保証会社の審査を受けられるか
緊急時に連絡できる人がいるか
連絡が取れなくなった際の対応方法
入院などで長期間不在になった場合の対応
死亡後に賃貸借契約をどのように処理するか
室内に残された家具や家電を誰が取り扱うか
ただし、これらが全国共通の審査項目として決められているわけではありません。
保証会社や管理会社によって条件は異なります。
なぜ死亡後の家財が問題になる?
賃貸住宅で入居者が亡くなった場合、室内に残された家具・家電・衣類・貴重品などの扱いが問題になることがあります。
例えば、相続人が分からない場合や、連絡先が分かっていても家財処理について協力が得られない場合です。
国土交通省と法務省では、入居者の死亡後に賃貸借契約や残置物の処理が難しくなることが、高齢者の入居を貸主がためらう要因の一つになっていると説明しています。
参考:
■高齢者が亡くなったら賃貸借契約は自動的に終了する?
賃貸住宅の入居者が亡くなったからといって、賃貸借契約が当然に終了するとは限りません。
原則として、賃借人の権利義務は相続の対象になります。
また、室内の家具や家電なども、原則として相続財産に含まれます。
例えば、70代の単身者が賃貸マンションに住んでいた場合です。
本人が亡くなった後、賃貸借契約を終了するための手続きや、家財の取り扱いについて確認が必要になります。
死亡後に確認が必要になる主な事項
項目 | 確認すること |
|---|---|
賃貸借契約 | 契約を終了するための手続き |
家賃 | 契約終了までの支払い・精算 |
敷金 | 未払債務等の精算と返還先 |
家具・家電 | 誰が処理する権限を持つか |
貴重品 | 保管・引渡し先 |
鍵 | 返却方法 |
公共料金 | 電気・ガス・水道等の契約 |
原状回復 | 契約や法令に基づく費用負担 |
重要なのは、入居者が亡くなったという理由だけで、貸主が室内の荷物を自由に処分できるわけではないことです。
■残置物とは?何が対象になる?
残置物とは、入居者が亡くなった後などに、賃貸住宅の室内に残された動産を指します。
例えば、
ベッド
タンス
テーブル
冷蔵庫
洗濯機
テレビ
食器
衣類
書籍
写真
手紙
アルバム
などです。
ただし、室内にあるものをすべて同じ方法で処理できるわけではありません。
特に、現金・通帳・貴金属・重要書類・思い出の品などは、取り扱いに注意が必要です。
残置物と原状回復は違う
項目 | 主な内容 |
|---|---|
残置物の処理 | 家具・家電・衣類などの取り扱い |
原状回復 | 賃貸借契約上の室内の修繕・回復 |
遺品整理 | 故人の所有物の整理 |
死後事務 | 死亡後の諸手続き等 |
相続手続き | 財産や債務などの承継に関する手続き |
これらは互いに関係することがありますが、同じ業務ではありません。
残置物処理を依頼したからといって、相続に関するすべての手続きが完了するわけではありません。
■国土交通省の「残置物の処理等に関するモデル契約条項」とは?
国土交通省と法務省は、2021年に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。
これは、単身高齢者が亡くなった場合に、賃貸借契約の終了や残された家財の処理を円滑に進めるための契約書のひな形です。
さらに2025年10月には、改訂された活用ガイドブックも公開されています。
モデル契約条項では2つの手続きを分ける
契約の種類 | 主な役割 |
|---|---|
賃貸借契約の解除に関する事務委任 | 本人の死亡後に、受任者が賃貸借契約を終了するための手続きを行う |
残置物の処理に関する事務委託 | 本人の死亡後に、受任者が決められた方法で家財を取り扱う |
この2つをまとめて同じ受任者へ委任することも、それぞれ別の受任者へ委任することも想定されています。
例えば、身寄りのない75歳の方が賃貸マンションへ入居する場合です。
入居前に、適切な受任者との間で契約解除と家財処理について必要な委任契約を締結する方法が考えられます。
これにより、入居者が亡くなった後の手続きについて、事前に取り決めをしておけます。
ただし、モデル契約条項を使用することは法律で一律に義務付けられているわけではありません。
また、これを利用すれば必ず賃貸審査に通るという制度でもありません。
■死後事務委任契約とは?保証人との違い
死後事務委任契約とは、本人が亡くなった後に必要になる事務の一部を、あらかじめ第三者へ依頼するための契約です。
依頼する内容は契約によって異なります。
例えば、
死亡後の関係者への連絡
賃貸借契約の終了に関する事務
家財・残置物の取り扱い
公共料金などの手続き
葬儀や納骨に関する手配
などが考えられます。
ただし、契約で定めていない業務まで自動的に行ってもらえるわけではありません。
保証会社・緊急連絡先・死後事務委任の比較
種類 | 主な役割 |
|---|---|
家賃保証会社 | 契約に基づく家賃等の保証 |
連帯保証人 | 保証契約の範囲で債務を保証 |
緊急連絡先 | 緊急時などの連絡先 |
死後事務の受任者 | 死亡後に委任された事務を行う |
居住支援法人 | 法人ごとの業務範囲で入居・生活支援等を行う |
死後事務委任契約を締結すれば、家賃保証会社や連帯保証人、緊急連絡先がすべて不要になるという意味ではありません。
それぞれ役割が異なるため、貸主・管理会社・保証会社の条件を個別に確認することが重要です。
■死後事務を頼める家族がいない場合は?
親族に依頼できない場合、専門職や対応する事業者、居住支援法人などへ相談することが考えられます。
ただし、すべての居住支援法人や専門家が、残置物処理や賃貸借契約解除の事務を引き受けているわけではありません。
相談先を選ぶときの確認事項
死後事務のどの業務に対応しているか
賃貸借契約の終了手続きを扱えるか
残置物処理に対応しているか
受任者として適切な立場にあるか
契約時の費用はいくらか
死亡後に追加費用が発生するか
預託金が必要か
契約の変更・解除ができるか
事業者が業務を継続できなくなった場合はどうなるか
相続人や関係者との連絡方法はどうなるか
特に、貸主・管理会社と受任者との関係には利害関係が生じる可能性もあるため、適切な受任者を選定する必要があります。
モデル契約条項の形式を使えば、誰でも無条件に受任者として適切になるわけではありません。
契約前に内容を理解し、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談しましょう。
■残置物は死亡後すぐに処分できる?
モデル契約条項では、亡くなった直後に残置物をすべて自由に廃棄するという仕組みにはなっていません。
賃貸借契約の終了や、契約で定められた処理方法、一定の期間などについて条件があります。
また、本人が廃棄を希望しない物品について、指定先への送付などを取り決める仕組みもあります。
例えば、本人が次のように希望している場合です。
家具・家電は必要な手続き後に処分したい
アルバムは指定した知人へ送ってほしい
貴重品は適切に保管・引き渡してほしい
重要書類は決められた方法で取り扱ってほしい
こうした希望を、契約内容や必要な指定の中で整理することが考えられます。
ただし、本人の希望だけで法律上の制限や相続人の権利を無視できるわけではありません。
モデル契約条項が定める具体的な条件に沿って対応する必要があります。
参考:
■2025年10月から居住支援法人の役割はどう変わった?
2025年10月1日施行の改正住宅セーフティネット法では、居住支援法人の業務に、入居者からの委託に基づく残置物処理が追加されました。
国土交通省は、その業務を実施する際には「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を活用することを基本としています。
これは、身寄りのない単身高齢者の住まい確保を支援するうえで重要な制度変更です。
居住支援法人とは?
居住支援法人は、都道府県の指定を受け、住宅の確保に配慮が必要な方を支援する法人です。
対応する内容は法人によって異なりますが、例えば次のような支援があります。
住まいに関する情報提供
入居に関する相談
保証サービス等に関する支援
生活支援や見守り
福祉サービスとの連携
委託に基づく残置物処理への対応
ただし、指定を受けている法人なら、すべての業務を必ず行うというわけではありません。
相談するときは、希望する地域でどのような支援を提供しているか確認しましょう。
■居住サポート住宅なら死後事務まで対応してくれる?
居住サポート住宅は、2025年10月から始まった認定制度です。
住宅確保要配慮者に対して、安否確認・見守り・必要な福祉サービスへのつなぎなどの入居中の支援を行う住宅です。
ただし、居住サポート住宅だからといって、死亡後の契約解除や残置物処理まですべて標準サービスとして含まれるとは限りません。
3つの仕組みの違い
制度・契約 | 主な目的 |
|---|---|
居住サポート住宅 | 入居中の安否確認・見守り・福祉連携 |
残置物処理の委任契約 | 死亡後に残された家財の取り扱い |
契約解除の委任契約 | 死亡後の賃貸借契約終了手続き |
これらは関連していますが、別の仕組みです。
居住サポート住宅を検討する場合は、見守りだけでなく、死亡後の手続きへの対応が必要なら、その取り扱いも確認しましょう。
■死後事務委任契約の費用はいくら?
契約内容や事業者によって異なるため、全国共通の料金はありません。
例えば、次のような費用が設定されている場合があります。
費用項目 | 確認する内容 |
|---|---|
契約時費用 | 契約書作成・相談等の料金 |
月額費用 | 継続的なサービス費の有無 |
預託金 | 将来の手続きに備える資金 |
家財処分費 | 家財の量や処分方法による |
室内清掃費 | 作業内容や部屋の状態による |
書類手続費 | 契約終了等の事務報酬 |
追加費用 | 特別な作業が必要な場合 |
料金を確認するときは、単純な契約時の金額だけでなく、将来発生する費用と、預けた資金がどのように管理されるかを確認することが大切です。
費用を比較する際の注意点
「契約時の費用が安い」という理由だけで選ぶことは避けましょう。
例えば、残置物の処分費用が別料金だったり、対応する業務が限定されていたりする場合があります。
また、預託金については、解約時の返還条件や資金の管理方法も重要です。
死後事務委任契約は、サービス内容・権限・費用・契約終了条件をセットで確認することが重要です。
■入居審査で死後事務委任契約があると有利になる?
死亡後の家財処理や契約解除について事前に対応方法が決まっていれば、貸主側の不安を軽減できる可能性があります。
しかし、死後事務委任契約を締結しただけで、必ず入居審査が承認されるわけではありません。
例えば、貸主や保証会社が家賃の支払い能力や緊急連絡先などを別途確認する場合があります。
申込み前に整理したい情報
項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
年金・収入 | 家賃を継続して支払えるか |
保証会社 | 利用できる保証会社があるか |
緊急連絡先 | 誰を登録できるか |
死後事務 | 何を誰に依頼しているか |
残置物 | 契約で処理方法が定められているか |
見守り | 必要な支援を利用できるか |
毎月の費用 | 家賃以外のサービス費用 |
契約条件 | 貸主・管理会社が認めるか |
「死後事務委任契約があるので保証人は不要です」と自己判断せず、申込先に確認してください。
■身寄りのない高齢者が賃貸を探すときの進め方
①現在の収入と希望家賃を整理する
年金収入や預貯金などを確認し、無理なく支払える家賃を考えます。
家賃だけでなく、共益費・保証料・見守りサービス費用なども含めて検討しましょう。
②緊急時に連絡できる相手を確認する
親族以外の緊急連絡先が認められるか、居住支援法人などへ相談できるか確認します。
③必要な支援を整理する
日常生活の見守りが必要なのか、死亡後の契約解除や家財整理を準備したいのかによって、相談先が異なります。
④受任者と委任契約を確認する
死後事務や残置物の処理について依頼できる受任者がいるか確認します。
契約内容や費用、本人の希望などを整理しましょう。
⑤貸主・管理会社の条件を確認する
準備した契約書や支援体制について、貸主や管理会社がどのように取り扱うか確認します。
⑥必要に応じて居住支援法人へ相談する
一般の賃貸物件だけでなく、住宅セーフティネット制度などの利用も検討できます。
ただし、対象物件や対応できる支援は地域によって異なります。
⑦将来の生活環境も確認する
高齢者のお部屋探しでは、契約できることだけがゴールではありません。
階段、浴室、トイレ、通院先、スーパーまでの距離など、長く無理なく住める環境も重要です。
住まいの設備については、次の記事で詳しく解説しています。
■よくある質問(FAQ)
Q1.身寄りがない高齢者でも賃貸を借りられますか?
借りられる可能性はあります。
ただし、貸主や保証会社の条件によっては、緊急連絡先や入居後の支援体制などを確認される場合があります。
Q2.高齢者が亡くなったら、賃貸契約は自動的に終了しますか?
原則として、死亡したことだけで当然に契約が終了するわけではありません。
賃貸借契約や相続、適切な委任契約の内容などを確認する必要があります。
Q3.大家さんは死亡後の家具を自由に処分できますか?
原則として、自由に処分できるわけではありません。
残された家財については、相続人の権利や適切な契約に基づく処理が問題になります。
Q4.死後事務委任契約があれば保証会社は不要ですか?
必ずしも不要にはなりません。
死後事務委任と家賃保証では役割が異なります。必要な契約条件は物件によって異なります。
Q5.居住支援法人に残置物の処理を依頼できますか?
対応できる居住支援法人はあります。
2025年10月施行の制度改正で、入居者からの委託に基づく残置物処理が居住支援法人の業務に追加されました。ただし、実際に対応しているかは法人ごとに確認が必要です。
■まとめ|身寄りのない高齢者の賃貸では、死亡後の手続きを事前に整理することが重要
高齢者の方が賃貸住宅を借りる際、家賃の支払い能力だけでなく、入居後の生活や万一の場合の対応を確認されることがあります。
特に身寄りのない単身者の場合、死亡後の賃貸借契約や家財の処理について、事前に準備できることがあります。
今回の重要なポイントは次の5つです。
身寄りがないだけで、すべての賃貸住宅を借りられなくなるわけではない
入居者が亡くなっても賃貸借契約が当然に終了するわけではない
国交省・法務省のモデル契約条項を活用できる場合がある
死後事務委任契約と家賃保証・緊急連絡先は役割が異なる
居住支援法人などの利用についても相談できる
重要なのは、高齢だから、家族がいないからという理由だけで、お部屋探しを諦める必要はないということです。
ただし、すべての賃貸物件で同じ条件が認められるわけではありません。
現在の生活状況、家賃、保証会社、緊急時の対応、死亡後の手続きなどを整理しながら、自分に合う住まいを検討することが大切です。
高齢者・シニアの方のお部屋探しや賃貸審査、年金、保証会社、緊急連絡先については、スマイファミリーの総合ガイドでも解説しています。
■関東で高齢者・シニアのお部屋探しにお悩みの方へ
「高齢で一人暮らしなので、賃貸審査が不安」
「身近に頼れる親族がいない」
「緊急連絡先をお願いできる人が見つからない」
「家族が遠方に住んでいる」
「死後事務や残置物の処理について準備したい」
このような場合は、現在の生活状況や必要な支援を整理することが重要です。
スマイファミリーでは、埼玉・東京・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬など、関東での高齢者・シニアの方のお部屋探しについてご相談を承っています。
希望する家賃、年金収入、保証会社、緊急連絡先、入居条件、必要な支援などを確認しながら、条件に合う賃貸物件をお探しします。
また、身寄りのない方についても、貸主や管理会社が求める条件を確認し、居住支援法人などへの相談が必要か整理することができます。
ただし、当社が死後事務委任契約の受任者となることや、残置物処理そのものを実施することを保証するものではありません。専門的な契約や法律上の判断については、適切な専門家への相談が必要です。
高齢者・シニアの方のお部屋探しでお困りの方は、スマイファミリーへご相談ください。

