
テナントの家賃に消費税はかかる?共益費・保証金・礼金・インボイスを契約前に解説
「店舗の家賃20万円と書いてあるけれど、消費税は別?」
「事務所の共益費にも消費税がかかる?」
「保証金6か月分にも消費税を加えるの?」
「大家さんがインボイス登録していない場合はどうなる?」
店舗や事務所などの事業用物件を探していると、賃料以外にも消費税や保証金、共益費など、さまざまな費用が登場します。
特に初めてテナントを契約する方は、住宅の家賃と事業用物件の家賃で、税金の取り扱いが異なることに戸惑うかもしれません。
結論からいうと、店舗・事務所などの建物の賃貸料は、原則として消費税の課税対象です。一方、住宅の貸付けは一定の条件の下で非課税とされています。
また、テナントの保証金や敷金については、返還されるものか、返還されないものかによって消費税の取り扱いが異なります。
「家賃20万円」と表示されていても、税抜20万円なのか税込20万円なのかで毎月の支払額は変わります。
今回は、東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬など関東で店舗や事務所を探している方へ、事業用賃貸の消費税、共益費、保証金、礼金、インボイス、契約前の確認事項を解説します。
■テナントの家賃には消費税がかかる?
店舗・事務所などの建物の賃貸料は、原則として消費税の課税対象です。
国税庁は、事務所などの建物を貸し付ける場合の家賃について、消費税の課税対象になると説明しています。
例えば、事業用テナントの賃料が税抜20万円の場合です。
項目 | 金額 |
|---|---|
月額賃料(税抜) | 200,000円 |
消費税10% | 20,000円 |
月額賃料(税込) | 220,000円 |
この場合、賃料として毎月支払う金額は22万円です。
ただし、募集図面に「賃料20万円」とだけ記載されている場合は、それが税抜なのか税込なのか確認する必要があります。
最初から税込20万円と表示されている物件であれば、さらに2万円を上乗せするという意味ではありません。
住宅の家賃とは何が違う?
物件の使用目的 | 消費税の基本的な扱い |
|---|---|
居住用マンション・アパート | 一定の条件の下で非課税 |
事務所 | 原則課税 |
店舗 | 原則課税 |
美容室・サロン | 原則課税 |
飲食店 | 原則課税 |
倉庫 | 原則課税 |
事務所兼住宅 | 契約上の用途・区分などの確認が必要 |
単に建物を借りるという点では同じでも、住宅として貸し付けるのか、事業用として貸し付けるのかによって取り扱いが変わります。
なお、事務所として使用している建物の家賃について、土地部分と建物部分を区分していても、国税庁は建物貸付けの対価の総額として取り扱う旨を説明しています。
参考:国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6225.htmr
■共益費・管理費にも消費税はかかる?
事業用建物の貸付けに伴って支払う共益費や管理費についても、原則として消費税の課税対象になることがあります。
例えば、次のようなテナント物件です。
月額賃料:200,000円(税抜)
共益費:20,000円(税抜)
この場合、消費税率10%として計算すると次のようになります。
項目 | 税抜 | 消費税 | 税込 |
|---|---|---|---|
賃料 | 200,000円 | 20,000円 | 220,000円 |
共益費 | 20,000円 | 2,000円 | 22,000円 |
合計 | 220,000円 | 22,000円 | 242,000円 |
この例では、実際の月額支払額は242,000円です。
賃料20万円だけを見て物件を探していた場合、共益費と消費税によって、毎月42,000円の差が生じます。
年間では504,000円の差です。
ただし、共益費の名称や徴収方法、契約上の性質によって取り扱いを確認する必要がある場合もあります。
共益費に含まれるものは?
共益費には、物件によって次のような費用が関係します。
共用部分の清掃
エレベーターの維持管理
共用照明
建物管理
共用設備の維持
共用部分の電気・水道など
ただし、どこまでが共益費に含まれるかは物件によって異なります。
募集図面では共益費として表示されていても、看板使用料、駐車場代、空調使用料などが別途請求される場合があります。
契約前には、毎月の支払総額を確認しましょう。
■保証金・敷金にも消費税がかかる?
ここは特に間違えやすい部分です。
保証金や敷金は、必ず全額に消費税がかかるわけではありません。
国税庁によると、賃貸借契約に伴って差し入れる保証金や敷金などのうち、契約終了時に返還されるものは、原則として資産の譲渡等の対価に該当しません。
一方、返還されない部分については、契約の内容や金銭の性質などによって課税対象になる場合があります。
保証金6か月の計算例
例えば、次の条件で考えてみましょう。
税抜賃料:200,000円
保証金:賃料6か月分
保証金の算定基準:税抜賃料
全額返還される保証金と仮定
この場合、
200,000円 × 6か月 = 1,200,000円
となります。
この120万円は、契約に基づき返還される性質の保証金であるため、通常の家賃のように10%の消費税を単純に加算するものではありません。
ただし、次のような契約条件がある場合は注意が必要です。
「保証金6か月分・解約時2か月償却」
この場合、返還される部分と返還されない部分を区別する必要があります。
保証金の消費税で確認すること
確認項目 | 内容 |
|---|---|
保証金の金額 | 賃料の何か月分か |
算定基準 | 税抜賃料か税込賃料か |
返還の有無 | 全額返還か一部償却か |
償却の時期 | 契約時か退去時か |
償却の計算 | 定額か割合か |
消費税 | 返還されない部分の課税関係 |
原状回復 | 償却とは別に負担するか |
保証金・敷金・償却の仕組みについては、既存の記事で詳しく解説しています。
テナントの保証金・敷金・償却と返還条件について詳しく見る →
■礼金・権利金には消費税がかかる?
店舗や事務所などの事業用建物の賃貸借に伴い、返還しない礼金や権利金を支払う場合、その金銭が建物の貸付けの対価であれば、原則として消費税の課税対象になります。
例えば、次の募集条件です。
賃料:200,000円(税抜)
礼金:1か月分(税別)
この場合、礼金を税抜賃料1か月分で計算する契約なら、
礼金200,000円+消費税20,000円=220,000円
となります。
一方、募集図面に「礼金1か月」と記載されているだけでは、税込・税抜や算定基準が明確でない場合があります。
礼金と保証金は同じではない
項目 | 主な性質 | 消費税の基本的な考え方 |
|---|---|---|
返還される敷金 | 債務の担保として預ける金銭 | 原則として課税対象外 |
返還される保証金 | 契約上、後日返還される金銭 | 原則として課税対象外 |
返還しない礼金 | 建物貸付けの対価 | 原則課税 |
返還しない権利金 | 建物貸付けの対価 | 原則課税 |
保証金の償却 | 返還されない部分 | 契約上の性質によって課税関係を確認 |
「保証金」という名前でも全額返還されるとは限らず、「権利金」という名前でも、その内容を確認する必要があります。
重要なのは、費用の名称だけで判断しないことです。
■テナントの初期費用はいくら?税込・税抜の計算例
実際のテナント契約を想定し、必要になる金額を整理してみましょう。
今回は次の条件とします。
賃料:200,000円(税抜)
共益費:20,000円(税抜)
保証金:賃料6か月分
礼金:賃料1か月分(税別)
仲介手数料:賃料1か月分(税別)
保証会社初回保証料:264,000円
保険料:30,000円
※すべて説明用の仮定です。保証金は税抜賃料を基準とし全額返還、仲介手数料の算定基準は税抜賃料とします。保証料・保険料は支払総額として仮定したもので、消費税区分を示すものではありません。
初期費用シミュレーション
項目 | 支払金額 |
|---|---|
保証金6か月分 | 1,200,000円 |
礼金(税込) | 220,000円 |
初月賃料(税込・1か月分) | 220,000円 |
初月共益費(税込・1か月分) | 22,000円 |
仲介手数料(税込) | 220,000円 |
初回保証料(仮定) | 264,000円 |
保険料(仮定) | 30,000円 |
初期費用合計 | 2,176,000円 |
この例では、税抜賃料20万円のテナントでも、初期費用は約218万円です。
なお、内装工事、設備工事、看板、什器、通信回線、許認可に関する費用などは含めていません。
実際の契約では日割り賃料や翌月分の前家賃、保証会社の料金体系などによって総額が変わります。
家賃だけでなく総額で比較する
例えば、A物件とB物件があった場合です。
項目 | A物件 | B物件 |
|---|---|---|
税抜賃料 | 180,000円 | 200,000円 |
税抜共益費 | 30,000円 | 10,000円 |
月額合計(税込) | 231,000円 | 231,000円 |
このケースでは、賃料だけを見るとA物件の方が安く見えます。
しかし、共益費と消費税を含めると毎月の支払額は同じです。
さらに保証金や礼金、内装工事費が異なれば、契約時の負担にも差が生じます。
テナントを比較する際は「税抜賃料」ではなく、「月額支払総額」と「開業までの費用総額」を確認することが重要です。
■テナントの家賃とインボイス制度は関係する?
関係する場合があります。
インボイス制度は、消費税の仕入税額控除に関する制度です。
事業者が消費税の課税事業者で、原則課税により仕入税額控除を行う場合、適格請求書等の保存が必要になることがあります。
店舗や事務所の賃料が課税対象であっても、貸主が適格請求書発行事業者かどうかによって、借主側で仕入税額控除を行う際の取り扱いが変わる場合があります。
大家さんがインボイス登録していないと借りられない?
いいえ。
貸主が適格請求書発行事業者として登録していないからといって、店舗や事務所を借りられなくなるわけではありません。
ただし、借主が消費税の仕入税額控除を行う場合には影響することがあります。
確認したいこと
項目 | 内容 |
|---|---|
貸主の登録状況 | 適格請求書発行事業者として登録されているか |
登録番号 | 通知された番号を公式サイトで確認できるか |
契約書 | 課税対象の賃料や税額等の記載 |
毎月の支払い | 口座振替・振込などの支払方法 |
インボイスの保存 | 契約書や通帳等の保存方法 |
借主の税務処理 | 原則課税・簡易課税などの適用状況 |
なお、借主が免税事業者だったり、簡易課税制度などを利用していたりする場合は、仕入税額控除の考え方が異なります。
インボイス登録の有無だけで、すべての事業者の税負担が同じように変わるわけではありません。
家賃は毎月インボイスを発行してもらう必要がある?
必ずしも毎月、通常の請求書を発行してもらう必要があるわけではありません。
国税庁は、事務所等の賃料を口座振替などで支払う場合、契約書に必要な記載事項があり、取引年月日を確認できる通帳等と合わせて保存する方法を案内しています。
ただし、契約書と通帳があれば無条件に要件を満たすわけではありません。
必要な記載事項が不足する場合には、別の書類などによる補完が必要になることがあります。
契約時には、貸主や管理会社へインボイス対応について確認しましょう。
参考:
■インボイス登録していない貸主の物件は避けるべき?
登録していないという理由だけで、物件の価値を判断することはおすすめしません。
店舗や事務所の選択では、立地、賃料、設備、契約期間、保証金、事業内容との適合性なども重要です。
一方で、仕入税額控除が事業の税負担に影響する場合は、契約前に確認する必要があります。
特に2026年10月17日時点では、インボイス制度の経過措置も関係します。
免税事業者等からの課税仕入れについて、一定の要件を満たす場合に一部の仕入税額控除を認める経過措置があります。ただし、適用割合や期間、その他の要件は改正の影響を受けるため、契約時点の最新情報に基づく確認が必要です。
具体的な控除額や税務上の有利・不利については、税理士へ相談することをおすすめします。
■消費税がかからないテナントはある?
事業用物件であっても、契約内容によって課税・非課税の判断が必要な取引があります。
代表的なのが土地の貸付けです。
国税庁では、土地の貸付けは原則として消費税の非課税取引としています。
ただし、貸付期間が1か月未満の場合や、駐車場などの施設利用に伴う土地の貸付けなどは、非課税とならない場合があります。
建物を借りる場合と土地を借りる場合
契約内容 | 消費税の基本的な扱い |
|---|---|
事務所の建物賃貸 | 原則課税 |
店舗の建物賃貸 | 原則課税 |
建物付きテナントの土地相当部分 | 家賃を区分しても原則として総額が課税対象 |
一般的な土地貸付け | 原則非課税 |
駐車場など施設利用に伴う土地貸付け | 課税となる場合がある |
例えば、店舗建物を借りる場合に、貸主が家賃を「建物分15万円、土地分5万円」と区分していても、建物貸付けの対価の総額として取り扱われる場合があります。
「土地部分には消費税がかからないはずだから、家賃の一部を非課税にできる」と自己判断することは避けましょう。
■フリーレント期間中は消費税も無料になる?
フリーレントは、契約で定めた期間の賃料を免除する取り決めです。
賃料が全額免除され、対価が発生しない期間については、通常、その免除された賃料に消費税を上乗せして支払うものではありません。
ただし、共益費や看板使用料など、免除対象に含まれない費用については別途支払いが必要な場合があります。
例えば、次の契約です。
月額賃料:20万円(税抜)
共益費:2万円(税抜)
フリーレント:賃料のみ1か月分
この場合、フリーレント対象月の賃料支払いは0円ですが、共益費は税込22,000円です。
また、フリーレントの適用条件として、短期解約時の違約金が設けられている場合もあります。
詳しくは既存の記事をご覧ください。
テナントのフリーレント・工事期間・違約金について詳しく見る →
■テナント契約前に確認したい10項目
店舗や事務所を契約する前には、次の内容を整理しましょう。
確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
①賃料 | 税込・税抜のどちらか |
②共益費 | 金額と消費税の扱い |
③保証金 | 何か月分で計算するか |
④保証金償却 | 金額・時期・税務上の扱い |
⑤礼金 | 税込・税抜と返還の有無 |
⑥仲介手数料 | 算定基準と税込総額 |
⑦保証会社費用 | 初回費用・更新料・請求総額 |
⑧インボイス | 貸主の登録状況と必要書類 |
⑨フリーレント | 対象となる賃料・期間・違約金 |
⑩月額支払総額 | 賃料・共益費・その他月額費用 |
特に、新規開業では賃料が発生しても、すぐに売上が入ってくるとは限りません。
契約時の費用だけでなく、工事期間中の支払い、開業後の固定費、運転資金まで考えておくことが大切です。
不動産会社へどう質問すればいい?
例えば、次のように確認すると分かりやすくなります。
「募集図面の賃料20万円は税込でしょうか、税抜でしょうか。共益費を含めた月額総額と、保証金・礼金・仲介手数料を含む初期費用の概算を教えてください。また、インボイス対応についても確認できますか?」
こうした情報を整理しておけば、複数のテナントを同じ基準で比較しやすくなります。
■よくある質問(FAQ)
Q1.テナントの家賃には必ず10%の消費税がかかりますか?
店舗・事務所などの建物の賃貸料は原則として消費税の課税対象であり、現在の標準税率は10%です。
ただし、募集賃料がすでに税込表示されている場合、さらに10%を加算するわけではありません。
Q2.事務所の共益費にも消費税がかかりますか?
事務所の貸付けに伴って徴収する共益費・管理費などは、原則として課税対象になる場合があります。
具体的には、契約内容や費用の性質を確認してください。
Q3.保証金6か月分にも消費税を加えるのですか?
全額返還される性質の保証金であれば、通常の家賃のように単純に10%を加算するものではありません。
ただし、返還されない部分や償却がある場合は、契約内容に基づく確認が必要です。
Q4.貸主がインボイス登録していなくても店舗を借りられますか?
借りること自体は可能です。
ただし、借主が消費税の仕入税額控除を行う場合、貸主の登録状況が税務上の取り扱いに関係することがあります。
Q5.毎月の家賃についてインボイスを発行してもらう必要がありますか?
毎月の請求書が必ず必要とは限りません。
契約書と支払記録などを組み合わせて必要な記載事項を満たす方法もあります。適切な保存方法は貸主・管理会社や税理士に確認しましょう。
■まとめ|テナントは税込賃料・初期費用・インボイスを分けて確認する
店舗や事務所を借りる場合、住宅の賃貸とは消費税の扱いが異なることがあります。
重要なのは、次の5点です。
事業用建物の賃貸料は原則として消費税の課税対象
共益費・管理費も契約内容に応じて確認する
返還される保証金と返還されない費用を区別する
税抜賃料だけでなく税込の月額総額を比較する
インボイス対応は貸主の登録状況と借主の税務処理を確認する
例えば、税抜賃料20万円のテナントでも、共益費・消費税・保証金・礼金・仲介手数料などを含めると、契約時の支払総額は大きくなります。
また、家賃が安い物件でも、設備工事や保証金が高額であれば、開業時の負担が大きくなる可能性があります。
テナントを借りる際は、賃料の表示金額ではなく、契約時に必要な資金と毎月の支払総額を確認することが大切です。
テナント・事業用物件の探し方、契約条件、保証会社、必要書類などについては、スマイファミリーの総合ガイドでも解説しています。
■関東で店舗・事務所・テナントをお探しの方へ
「新しく飲食店を開業したい」
「美容室やサロンの店舗を探している」
「事務所を移転したい」
「税抜賃料だけでは初期費用が分からない」
「保証金や償却の条件を比較したい」
「希望する業種で利用できるテナントを探したい」
このような場合は、物件の立地や広さだけでなく、契約条件と必要な開業資金を整理することが重要です。
スマイファミリーでは、埼玉・東京・千葉・神奈川・茨城・栃木・群馬など、関東の店舗・事務所・テナント・事業用物件探しについてご相談を承っています。
希望エリア、業種、必要面積、予算、開業予定日などを確認しながら、条件に合う物件探しをお手伝いします。
また、物件によって異なる保証金、礼金、共益費、賃料発生日、フリーレントなどの条件についても、管理会社や貸主へ確認しながら比較できます。
なお、具体的な消費税の申告、仕入税額控除、インボイス制度への対応については、税理士などの専門家へ確認してください。
店舗や事務所の開業・移転をご検討中の方は、スマイファミリーへご相談ください。
