
テナントの保証金・敷金・償却とは?退去時にいくら戻るか契約前に確認
店舗、事務所、オフィスなどのテナントを探していると、募集条件に、
「保証金6か月」
「敷金3か月」
「償却2か月」
「解約時20%償却」
「敷引きあり」
などと記載されていることがあります。
住宅の賃貸契約と比べて金額が大きくなることもあり、
「保証金と敷金は何が違う?」
「保証金は全部返ってくる?」
「償却2か月とはどういう意味?」
「退去するときに原状回復費用も別で必要?」
「保証会社へ払うお金とは違う?」
「解約したらいつ返金される?」
と疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
テナント契約では、賃料だけを見て物件を決めるのではなく、契約開始時に必要な保証金や敷金、退去時の償却、原状回復、解約予告期間まで確認しておくことが重要です。
例えば保証金が賃料の6か月分必要な物件では、月額賃料が30万円なら、保証金だけでも大きな資金が必要になります。
さらに契約内容によっては、その全額が退去時に返還されるとは限りません。
今回は、東京・埼玉・千葉・栃木・茨城・群馬でテナント・事業用物件を探している法人・個人事業主の方へ、保証金、敷金、償却、退去時の返還条件について解説します。
■テナント契約の「敷金」とは?
敷金は、賃貸借契約に基づいて借主が負う可能性のある金銭債務を担保するため、貸主へ預ける金銭です。
法務省は、敷金について名称にかかわらず、賃料など賃貸借から生じる債務を担保する目的で貸主へ交付する金銭と説明しています。
賃貸借契約が終了し、物件を返還した後、未払い賃料などの債務を差し引いた残額について返還するというルールが民法で明確化されています。
そのため、契約書に「敷金」と書かれている場合は、
・何か月分預けるのか
・何の債務を担保するのか
・退去時に何が差し引かれるのか
・いつ返還されるのか
を確認しましょう。
■「保証金」とは?
事業用物件では、「敷金」ではなく「保証金」という名称が使われることがあります。
名称が保証金であっても、賃料などの債務を担保する目的で貸主へ預ける金銭であれば、民法上の敷金に該当する場合があります。法務省も「保証金」という名目であっても、担保目的の金銭について敷金のルールが関係する例を示しています。
ただし、実際の事業用契約では保証金について、
・償却
・返還時期
・充当できる費用
・途中解約時の取り扱い
などが細かく定められていることがあります。
名称だけで判断せず、契約書の内容を確認することが大切です。
■保証金と敷金は何が違う?
実務では事業用物件で「保証金」、住宅では「敷金」という名称が使われることもありますが、名称だけで法律上の性質が決まるわけではありません。
重要なのは、
「何のために預ける金銭なのか」
です。
貸主が、
・未払い賃料
・原状回復費用
・その他契約上の債務
などに備えて預かるものであれば、担保としての性質があります。
そのため、
「保証金だから返ってこない」
「敷金だから必ず全額戻る」
と判断するのは避けましょう。
■「償却」とは?
テナント募集で特に注意したいのが「償却」です。
例えば、
「保証金6か月・解約時2か月償却」
と書かれている場合があります。
一般的には、契約で定められた一定額について、退去時に返還しない取り扱いを意味して使用されます。
ただし、
・契約開始時に償却する
・契約終了時に償却する
・賃料○か月分
・保証金の○%
・契約期間によって償却率が変わる
など、条件は契約によって異なります。
「償却あり」という言葉だけでは、実際に返ってくる金額を判断できません。
必ず償却の時期・金額・計算方法を確認しましょう。
■保証金6か月・償却2か月ならどう考える?
例えば、
月額賃料30万円
保証金6か月分
償却2か月分
という条件なら、保証金として預ける金額は180万円です。
契約上、退去時に2か月分を償却する条件であれば、60万円について返還されない取り扱いになる可能性があります。
そこからさらに、
・未払い賃料
・原状回復費用
・その他借主負担となる費用
などが差し引かれる契約であれば、実際の返還額はさらに少なくなる可能性があります。
ただし、「賃料」の基準、消費税の扱い、償却時期などは契約書によって異なるため、上記はあくまで考え方の一例です。
具体的な金額は契約条件を確認しましょう。
■「敷引き」と書かれている場合
契約によっては「償却」ではなく「敷引き」という表現が使われる場合があります。
これも契約終了時に一定額を返還しない条件として使われることがありますが、名称だけで内容を判断しないことが大切です。
例えば、
「敷金5か月・敷引き1か月」
という条件なら、
・いつ敷引きされるのか
・何の費用として扱われるのか
・原状回復費用は別途なのか
を確認しましょう。
■償却すれば原状回復費用はかからない?
ここは特に注意したいポイントです。
償却があるから、退去時の原状回復費用がすべて含まれているとは限りません。
契約によっては、
保証金の償却
+
原状回復費用
の両方が必要になる場合があります。
例えば店舗で、
・床
・壁
・天井
・間仕切り
・厨房設備
・ダクト
・給排水管
・看板
などを借主負担で撤去する契約になっていれば、保証金の償却とは別に工事費が発生する可能性があります。
居抜き物件についても、スマイファミリーの既存記事で「居抜きで借りても退去時にスケルトン返しを求められる場合がある」ことを解説しています。
■「保証金を払っているから原状回復はその中から払えばいい」は危険
借主側が、
「保証金を預けているから、退去工事は保証金から差し引いてもらえばいい」
と考えている場合があります。
しかし、契約によっては、
・原状回復工事を借主自身が行う
・貸主指定業者を利用する
・明渡し日までに工事を完了する
などと定められていることがあります。
つまり、保証金返還とは別に、先に原状回復工事費を用意しなければならない可能性があります。
開業時だけでなく、退去時の資金も考えて契約することが重要です。
■保証会社の費用とは別
テナント契約では、
「保証金」と「保証会社」
という似た言葉が出てくるため、混同しやすくなります。
保証金は、貸主へ預ける金銭として設定されるものです。
一方、保証会社利用料は、家賃保証会社を利用するための費用です。
そのため、
保証金を6か月分預ける
+
保証会社にも加入する
という契約もあります。
「保証会社へ加入するから保証金は不要」とは限りません。
物件ごとに確認しましょう。
■保証会社の初回費用は返ってくる?
保証会社へ支払う初回保証料は、貸主へ預ける保証金とは性質が異なります。
契約を終了したからといって、保証金と同じように返還されるものとは限りません。
また、
・初回保証料
・年間更新料
・月額保証料
などが設定されている場合があります。
テナント契約では毎月の賃料だけでなく、保証会社の継続費用も確認しておきましょう。
■礼金とも違う
礼金も、保証金・敷金とは性質が異なります。
礼金は一般に返還を予定しない契約条件として設定されます。
そのためテナントの初期費用では、
保証金
敷金
礼金
償却
をそれぞれ分けて確認することが重要です。
募集図面に複数の項目が書かれている場合は、
「最初にいくら支払うのか」
「退去時に戻る可能性があるのはいくらか」
を整理してみましょう。
■保証金はいつ返ってくる?
保証金や敷金の返還時期も、契約書で確認したい項目です。
民法上の敷金については、賃貸借が終了して物件の返還を受けた後に、未払い債務などを控除した残額を返還するルールが明確化されています。
ただし事業用の契約では、実際の返還について、
・明渡し後○日以内
・明渡し後○か月以内
・原状回復費用確定後
など、契約上の取り決めが設けられている場合があります。
新しい店舗への移転資金として保証金返還を予定している場合は特に注意しましょう。
「退去日にすぐ返ってくる」
とは限りません。
■次の店舗の保証金を先に用意することもある
店舗を移転するときは、
旧店舗の保証金返還前
↓
新店舗の保証金支払い
という順番になる可能性があります。
例えば旧店舗へ保証金300万円を預けていても、その300万円が戻る前に、新しい店舗へ200万円の保証金を支払わなければならない場合があります。
さらに、
・内装工事
・引っ越し
・看板工事
・設備購入
などの費用も重なります。
移転する事業者は、保証金が返還される時期まで含めて資金計画を立てましょう。
■テナントの解約予告期間にも注意
住宅では解約予告1か月などの契約もありますが、事業用物件では、それより長い解約予告期間が設定されている場合があります。
例えば契約書に、
「6か月前までに書面で通知」
と記載されている場合、退去したい日の直前に連絡しても、契約上の賃料負担が続く可能性があります。
また、
・電話連絡だけでは不可
・指定の解約通知書が必要
・貸主へ書面が到達した日を基準とする
など、通知方法が決められている場合もあります。
契約時点で解約条件まで確認しましょう。
■解約予告期間中も賃料は必要?
実際に店舗営業を終了して荷物を搬出したとしても、賃貸借契約がまだ続いていれば、賃料などが発生する可能性があります。
例えば、
営業終了:3月31日
契約終了:6月30日
となれば、その間も契約上の支払いが続く可能性があります。
さらに原状回復工事期間を、賃貸借契約期間内に終わらせる必要がある場合もあります。
移転や閉店を考える場合は、
「営業をいつやめるか」
ではなく、
「いつ契約を終了し、いつまでに原状回復して明け渡す必要があるか」
から逆算しましょう。
■中途解約できない契約も確認する
テナント契約によっては、
・契約期間中の途中解約に制限がある
・一定期間未満の解約で違約金が必要
・定期建物賃貸借契約
などの条件があります。
「店舗を閉めればいつでも契約を終えられる」
とは限りません。
事業計画に変更があった場合のリスクも考えて、契約解除・解約条項を確認しましょう。
■普通借家と定期借家でも違う
事業用テナントでも、普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約があります。
定期建物賃貸借契約では、契約期間満了によって契約が終了し、引き続き利用する場合は再契約などの手続きとなることがあります。
例えば、
「店舗へ大きな内装投資をする予定なのに契約期間が短い」
という場合は、投資回収期間にも影響します。
保証金だけでなく、契約期間や更新・再契約についても確認しましょう。
■保証金が高い物件は避けるべき?
保証金が大きいからといって、その物件が悪いとは限りません。
立地や店舗面積、賃料、事業内容などによって契約条件は異なります。
例えば、保証金は高くても、
・集客しやすい立地
・設備条件が良い
・希望する業種で営業できる
・大きな工事が不要
などのメリットがある場合があります。
反対に保証金が少なくても、大規模な内装工事や設備工事が必要なら、開業時の総額は高くなる可能性があります。
「保証金が何か月か」だけではなく、開業までの総額で比較することが重要です。
■初期費用全体を確認する
テナント契約では、保証金だけではなく、
・敷金または保証金
・礼金
・前家賃
・共益費
・仲介手数料
・保証会社利用料
・火災保険
・看板費用
・内装工事費
・設備工事費
・許認可に必要な費用
などが発生する可能性があります。
例えば「賃料20万円」と表示されていても、200万円以上の資金が必要になるケースも考えられます。
申込み前に概算総額を整理しましょう。
■「保証金○か月」の基準となる賃料を確認する
保証金を「賃料の○か月分」と設定している場合は、
何を基準に計算するのか
も確認すると安心です。
例えば、
・税抜賃料
・税込賃料
・共益費を含むか
など、募集条件や契約書を確認します。
募集図面だけを見て自分で金額を計算し、実際の契約金と違ったということがないようにしましょう。
■消費税の取り扱いも確認する
事業用物件では、住宅とは異なり、賃料などについて消費税が関係する場合があります。
また、保証金等についても返還の有無や契約上の性質などによって税務上の扱いを確認する必要がある場合があります。
具体的な会計・税務処理については、税理士などの専門家へ確認しましょう。
不動産会社から提示された契約金については、
「税込でいくら必要なのか」
を確認しておくと分かりやすくなります。
■契約前に確認したい保証金・償却の項目
テナントを申し込む前には、少なくとも次の内容を確認しましょう。
・保証金または敷金はいくらか
・賃料の何か月分か
・償却はあるか
・償却額は固定額か割合か
・償却する時期
・退去時に返還される計算方法
・原状回復費用は別途か
・未払い賃料など何を控除できるか
・返還時期
・保証会社への加入条件
・解約予告期間
・中途解約違約金
・退去時の返還状態
・スケルトン返しの有無
契約書へ署名してから確認するのではなく、申込みから契約までの間に整理することが大切です。
■開業時だけでなく「撤退するとき」を考えて契約する
テナントを借りるときは、
「どんな内装にするか」
「いつオープンするか」
「売上はいくら必要か」
など、開業について考えることが中心になります。
しかし、事業用の賃貸借契約では、退去時にも大きな費用がかかる場合があります。
例えば、
保証金の償却
原状回復
設備撤去
看板撤去
解約予告期間中の賃料
などです。
開業前から、
「もし将来ここを退去するなら、何が必要になるか」
まで確認しておくことが、事業リスクを抑えるためにも重要です。
■東京・埼玉・千葉・栃木・茨城・群馬でテナントをお探しの方へ
スマイファミリー大宮店では、東京・埼玉・千葉・栃木・茨城・群馬で、店舗、テナント、事業用、事務所、オフィスなどの物件探しについてご相談を承っています。
「保証金が高くて契約していいか迷っている」
「償却2か月の意味が分からない」
「退去時にいくら戻るのか知りたい」
「初期費用の総額を確認したい」
「新規開業なので資金をできるだけ残したい」
「現在の店舗から移転したい」
「解約予告と新店舗の契約時期を整理したい」
このような場合も、賃料だけでなく、保証金、償却、初期費用、契約期間、必要設備、希望エリアなどを確認しながら物件をお探しします。
テナント契約では、契約時に支払う金額と、退去時に戻る金額は同じではありません。
保証金・敷金の金額だけでなく、
「いくら償却されるのか」
「何が差し引かれるのか」
「いつ返還されるのか」
「原状回復は別なのか」
まで確認することが大切です。
東京・埼玉・千葉・栃木・茨城・群馬でテナント・事業用物件をお探しの方は、スマイファミリー大宮店へお気軽にご相談ください。
